セルバーグ跡公式について
1.ポアソン和公式
セルバーグ跡公式とは非可換なポアソン和公式です。(ポアソン和を説明してるイカ娘の画像
という風にまあポアソン和公式はスゴイ公式をかんたんに見つけれる公式です。代数的整数論のゼータ関数関連でもよく使われます(この記事はゼータ関数関係なんですけど残念ながら代数的な整数論じゃないんですね〜(解析的整数論でもない、強いて言うならゼータ関数論)で、このポアソン和公式は数論ではたくさんの派生があるんですね、例えばFourier解析の自然な一般化で局所コンパクトアーベル群でのポアソン和公式とか、でそれのある到達点がセルバーグ跡公式なわけです。(数学にありがちなんですが一般化が始まった時点で終わりじゃなくて新たな始まりなんですね)(余談ですがセルバーグがコンパクトな双曲曲面の跡公式を出したのが1956年でヤンミルズ場の方程式が出たのが1954年で近いんですよね、この時期に非可換な群を応用する動きが始まって来たと考えたら感慨深いです。ポアソン和公式もマクスウェル方程式も19世紀ですよね。人類の偉大な進捗が感じれて感慨深いです。
でポアソン和公式とはそもそもなんじゃ?って話になると思うんですが(えっ?もしかするとならない??)これは無限次元の行列で(対角成分の和)=(固有値の和)をやったものです。というわけで一度ポアソン和公式とか跡公式とか全部忘れて行列の話にしましょう♪
2.無限次元行列の跡公式
有限次元だとあまり面白みがない例しかないので無限次元行列で具体的な跡公式の例を考えましょう。有限体F_pの代数閉包に作用するp乗フロベニウス写像にどう作用するかを考えます。
これは一般の素数べき元体にも言えます。つまりF_p^2体は{A^2の固定点の集合}と考えれます。xをAでの固定点では無いと考えるとある最小多項式を考えれてそれにフロベニウス写像を考えると固定点では無いという過程より共役元に移ったと考えれてるって議論ですね。位数2の巡回群をベクトル空間だと考えて行列で表すとこうなります。
対角成分をZで表します
これを3の時も同様に考えていくと最終的にAの雰囲気がわかってくると思います。これの対角成分との和と固有値の和が等しいことを示したいんですが、それを説明する前に少し脱線してヴェイユ予想の話をしたいと思います。(すぐ終わります。ラマヌジャン予想とヴェイユ予想は「いつもは難解な代数側の問題を解析側に翻訳して解いてたけど今回は解析の難解な問題を代数側で解いた。」というラングランズ哲学的に重要な話です。この跡公式はラマヌジャン予想とヴェイユ予想の類似がわかりやすくでてます。)それはゼータ関数の極、ゼロ点の固有値解釈です。
2.5 固有値解釈
ゼータ関数の極やゼロ点を固有値だと初めて解釈したのはポリヤだと言われてます(あの名著「いかにして問題を解くか」の著者です。)
で、この人は「あるエルミート作用素を見つけることによってリーマン予想を解決できるんじゃね?」ってことを考えました。具体例としては合同ゼータ関数の行列表示ですね。この場合はフロベニウス作用素がエルミート作用素の代わりになってます。
Euler積っぽいですね〜
この考え方を抽象化したのが力学系のゼータ関数になりフロベニウス作用素が置換行列になってて、別の表示だとζ_σ(a)=exp(Σ|Fix(σ^m)|e^-ms/m)=det(I-M(σ)e^-s)^-1となります。合同ゼータ関数と比べてみるとζ_A(s)=exp(Σ|Hom(A,F_p^m)|p^-ms/m)...似てる気がする?...(ちなみに固定点はトレースを使って表されるみたいです。今議論してるのはp乗フロベニウス写像なので固定点がトレースに一致する話と同じですね、これがさらに一般化されてLefshetz trace fomulaになったりするんでしょうか)
閑話休題、話を戻して、フロベニウス作用素のトレース和がpなことはすぐに分かります。固有値は普通det(λI-A)の解の方を言うんですが今回は逆数をuと置きdet(I-Au)=Πdet(I_jk(j)-Aju)=Πdet(I_j-Z_ju)^k(j)なので固有値は1のj乗根となり固有値の和もpとなり等式が成立します。(k(j)はj次のF_p上既約な多項式の数のことです。)
ポアソン和公式を無限次元の行列の跡公式だと考えましょう。まず縦ベクトルを連続無限次元にしたら一変数の関数になります(一変数の関数にベクトルが対応するイメージ)すると二変数の関数が行列になるのがわかります。
Lf(z)=∫k(z,z')f(z')dz'の積分作用素を考えます。ここでkに条件をつけます。ちなみに積分範囲は不変被覆空間全体です。
「1.k(z,z')ら差z-z'のみによる(つまりある一変数関数で表される)
2.k(z,z')はΓ-不変。つまりk(z,z')=k(gz,gz')
3.fもΓ-不変」
条件1.はLを行列と考えるとAの成分がi-jのみによると言い換えることができます。hが偶関数なら対称行列です。
条件2.と3.は不変被覆空間上の関数であるだけでなく基本領域上の関数であると言い換えれます。(ここでは不変被覆空間を基本群で割ったものを基本領域と定義します。)基本領域の元zと基本群の元を用いて不変被覆空間の元は一意にz'=γzと表されるので元の式はLf(z)=Σγ∈Γ∫k(z,γz')f(γz')dz'となります。そして基本領域上ではz~γzなので対角成分の和はz=z'に限定した和となります。
ここで不変被覆空間をR、基本群をZとするとΣγ∈Z∫1_0k(z,z+γ)となり条件1よりk(z,z+γ)=h(γ)なので積分zによらずΣh(γ)となります。固有値はhの全体の和をフーリエ展開して適当な計算したらf(x)=e^-2πimzが固有関数だとわかるので一番初めの和公式の議論を使えばポアソン和公式がでます。これが跡公式としての和公式です。
3.セルバーグ跡公式
Γ⊂SL(2,R)で群モジュラー群の作用を定義して、X内に固定点を持つ行列を楕円型(おっきい文字)とし(判別式が負、-2<a+d<2と同値)X内に固定点を持たないで境界である実軸内に二つの固定点を持つのを双極型と言い(判別式が正、|a+d|>2と同値)それ以外を放物型といいます。(ただし単位行列とその-1倍は除きます)ここで群に関する命題があります。
定理n 基本領域が面積有限とすると部分群Γが持つ元と基本領域の間には次の関係が成り立つ。
Γは必ず双曲の元をもつ
楕円形の元を持たなければ基本領域は滑らかである
放物型の元をもてば基本領域はコンパクトでない。
ということで今回は簡単のため双曲型の元しか持たない群を考えます。
後X(空間)についても制約を課します。Xは複素上半平面で二点間の距離を
log*1とします。この距離では二点間を結ぶ最短経路が中心が実軸上にある円周となります。こっからの仕組みは少しわかりませんが(メモとして)u(d)=coshd-1/2に距離関数を入れると|z-w|^2/4ImzImwと綺麗に表せるらしいです。なのでさっきの跡公式の条件でいう二点間の差をこっちで定義して(単調増加関数であるからdの大小をこっちでも測れるみたいです、見た感じx軸が小さいところでは見た目より長く、x軸が大きいところでは見た目より小さく定義されみたいです)hの関数に入れるみたいです。(詳しくはこれを読むこと)https://www.google.com/amp/s/thatsmaths.com/2013/10/11/poincares-half-plane-model/amp/
4.セルバーグ・ゼータ関数とセルバーグ予想
*1:|z-w*|+|z-w|)/(|z-w*|-|z-w|